GRAND PATIO

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LIBRARY

日々の生活に変化をもたらす、
新しい本や言葉との出会い

このライブラリーでは私のお薦めする本だけでなく、玉川高島屋に長年通われているお客様へのインタビューワークを通じ、多面的な選書を心がけました。また、それらの本をただ置くのではなく、一冊一冊を丁寧に差し出すような気持ちで、サインや什器の計画をしています。例えば、本のなかの印象的な一節を大きく抜き出し表示することで、本を手に取る前に「言葉」が視界に入り、少しだけ好奇心が揺さぶられるかもしれません。さらに棚に近づき、本を手に取った後も、傍らの解説文でより深く本の中身を味わってもらえます。このように、何層にもわたって「差し出し方」に工夫を凝らした本たちが、いつもなら気づかない発見をお客様にもたらし、日々の生活や個々の感情に新しい波を呼び起こす存在になってくれたら嬉しい限りです。このライブラリーは年に4回テーマを変えて選書していきます。何度も足を運び、ゆったりとした遅効の時間をお過ごしください。

Book Selection

幅 允孝YOSHITAKA HABA

有限会社BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。人と本の距離を縮めるため、図書館や病院など様々な場所でライブラリーの制作を手がける。近年の仕事として札幌市図書・情報館の立ち上げや海外のJAPAN HOUSEなど。2020年夏開館予定の「こども本の森 中之島」ではクリエイティヴ・ディレクションを担当。
Instagram: @yoshitaka_haba

Photo by Kazuhiro Fujita

NO.01 未知はまだ存在する
NO.01 The theme of BOOK SELECTION 未知はまだ存在する
一回目の選書テーマは「未知はまだ存在する」です。秘境や辺境の地への旅の本、(世の中が落ち着いたあとに)次に訪れる旅先を探すための本などに加え、知っていると思っていた身近な風景の中に見出す未知も新たな旅の一部だと捉えました。グローバル化が進み、見知らぬ街の小径さえ衛星写真で眺められる時代、世界が日々せまくなっていると誰もが感じています。そして、全部わかった気にもなってしまうものです。けれど、自身の足で世界を実測し、それを美しい写真や言葉で伝える人たちの本を読むと、まだ知らない地球の多様さが溢れ出てきます。いまだ人は小さく、未知という喜びはいつだって存在しているのです。

もしかしたら、
本当の辺境は自分の内に
あるのかもしれない、
とも思う。

(P18)

『この星の光の地図を写す』
石川直樹

リトルモア/2019年

北極から南極まで。海抜0mから標高8,848mまで。辺境から都市まで。地球上のあらゆる場所を旅しながら作品をつくってきた写真家・石川直樹の20年の旅の軌跡をおさめた一冊。世界の風景と人々の飾らない日常の営みが並ぶこの写真集は、世界と自分の間にある境界線を曖昧にぼやかし、世界の見え方を変えてくれます。

雲の上の行く先に
想いを馳せる
人々の表情の豊かさ。

『Passengers』
John Schabel

Twin Palms Publishers/2013年

粒子の粗いモノクロ写真に写るのは、滑走路をいく飛行機の窓越しに切り取った乗客たちの姿です。アメリカの写真家 ジョン・シャベルが、1994年から1996年にかけて撮影しました。実質1,000mmの望遠で捉えられた、表情のはっきりとは見えない乗客たちは、機上でどんなことを考えているのか……想像が膨らみます。

「恋人は古いコンセプト。
わたしたちは並んで
歩く人たち」

(P296)

『地球にちりばめられて』
多和田葉子

講談社/2018年

留学中に故郷の島国が消滅してしまい、大陸で生き抜くために独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した女性と、言語学を研究する青年。ふたりは出会い、女性と同じ母語を話す人を捜す旅に出ます。ドイツ語と日本語、ふたつの言語を操るドイツ在住の作家 多和田葉子による、言葉のきらめきが感じられる長編小説です。

The universe
resounds with
the joyful cry I am.

(P23)

『The Family of Man』
Edward Steichen, Carl Sandburg

Museum of Modern Art/1955年

1955年にニューヨーク近代美術館の開館25周年を記念して、写真部門のディレクターであったエドワード・スタイケンが企画した展覧会の写真集。結婚、誕生、遊び、家族、死、戦争という人類の普遍的な営みをテーマとして扱った写真たちは、当たり前の日常や日々の生活こそが人生であると教えてくれます。

どこでもいい! 
どこでもいい!
この世界の外で
ありさえすれば!

(P46)

『旅する哲学−大人のための旅行術』
アラン・ド・ボトン(著)、安引宏(訳)

集英社/2004年 絶版

ロンドンの哲学者 アラン・ド・ボトンによる旅行術の本であり、極上の旅エッセイでもある一冊。ユイスマンス、フンボルト、ゴッホ、ボードレールなどの偉大な先人たちの生涯や作品における旅と、それらとリンクしながら語られる著者自身の旅から、世界の素晴らしさを発見する方法や旅を楽しむ秘訣を学べます。

同じようでいて少しずつ違う
空港の風景や飛行機の姿。
そこから浮かぶ共通と差異。

『800 VIEWS OF AIRPORTS』
Peter Fischili, David Weiss

Buchhandlung Walther König/2012年

スイス人デュオ・アーティスト、ぺーター・フィッシュリとダヴィッド・ヴァイスによる空港の写真集。彼らは、25年近くにわたり世界中を旅して通過した空港を撮影しています。国や立地による空港の雰囲気の違いや飛行機の機体デザインを800枚という圧巻のボリュームの写真でご堪能ください。

  • 写真家の視点を借りると、
    建築物は3Dのグラフィックになる。

    『WILSHIRE BLVD』
    Adrian Gaut

    August Editions/2017年

    ロサンゼルスのダウンタウンからサンタモニカをつなぐウィルシャー・ブルバード(ウィルシャー大通り)は、高級街が続くことで知られています。この本は、ニューヨークに拠点を置く写真家 エイドリアン・ゴートが、この通りにある建築物に魅せられ、ユニークなフレーミングで切り取った写真作品を100点以上掲載しています。

  • Everyone receives his or her
    passport from the country
    they are citizens of.

    (P16)

    『The Passport Book』
    Nicola von Velsen

    PRESTEL/2017年

    世界各国のパスポートを集めたガイド本。パスポートの表紙が原寸大フルカラーで掲載され、地図上の国の位置、国旗、人口、公用語などの情報とともに紹介されています。母国のパスポート以外を見る機会はあまりないので、表紙に描かれた紋章やデザインは、どれも新鮮に映るのではないでしょうか。

  • 生きるとは
    変わっていくこと

    (P53)

    『生きるって、なに?』
    たかのてるこ(文と写真)

    テルブックス/2018年

    「生きるって、なに?」この、文章としては平易だけれど答えるのはとても難しい問いを起点に、私たちが生きていく上でぶつかる様々な疑問を数珠つなぎで問い、それに答えてくれる一冊です。「生きる意味」や「平和」など、生きる上で大事なことを教えてくれます。文章に添えられている、世界に暮らす人々の笑顔の写真も印象的です。

  • そのとき
    やまとみずうみが みどりになった。

    (P29)

    『よあけ』
    ユリー・シュルヴィッツ(作・画)、
    瀬田貞二(訳)

    福音館書店/1977年

    唐の詩人・柳宗元の詩『漁翁』をモチーフにした絵本。山に囲まれた湖の畔。静かで寒くて暗い夜から、空の端が少しずつ明るくなってゆき、やがて朝日が昇る。夜明けどきの短い時間、自然の情景が刻々とうつろいゆく様を淡くやさしい色調で描いた一冊です。ページをめくり、日が昇ったその瞬間の描写の美しさは思わず息をのみます。

  • 今でも月の地表にそのまま
    残っているブーツの跡は、
    半世紀前、つまり現在世界で暮らす
    70億人の大半が生まれる前に
    つけられたものなのだ。

    (P8)

    『MOONSHOTS
    宇宙探査50年をとらえた奇跡の記録写真』
    ピアーズ・ビゾニー(著)、佐藤健寿(監修)

    玄光社/2019年

    NASAが宇宙探査時にハッセルブラッドのカメラでとらえた美しい宇宙の写真を200点超収録した写真集。ジェミニやアポロ計画、ロケットの打ち上げ、国際宇宙ステーションの建設……アポロ11号の月面着陸から50年という節目の年にNASA宇宙探査の歴史を振り返る豪華な一冊が誕生しました。

  • アラスカの本当の大きさは、
    鳥の目になって、
    空から見ないとわからない。

    (P291)

    『長い旅の途上』
    星野道夫

    文藝春秋(文春文庫)/2002年

    ロシアのカムチャッカ半島でヒグマに襲われて急逝した星野道夫の遺稿集。既発表で単行本未収録の文章を可能な限り盛り込むことを編集方針とした一冊。写真家であり、探検家や詩人としても知られる彼が生活の基盤としていたアラスカのことをメインに、人と自然にまつわる優しい世界が広がるエッセイです。

  • 「ああ。この臭い」と、
    気がついただけで、
    三年間忘れていた南洋のいっさいが
    戻ってくるのであった。

    (P56)

    『まばゆい残像 そこに金子光晴がいた』
    小林紀晴

    産業編集センター/2019年

    写真家・小林紀晴は、若い頃に詩人・金子光晴の詩や紀行文に出会い、以降30年にわたって彼の残した跡を道標に世界を訪ねてきました。この本は、小林が金子を追った旅の記憶を振り返り、新たな紀行文として書き下ろしたフォトエッセイです。著者が当時撮影したものの中から新たにセレクトした写真と金子光晴の詩文も併載されています。

Theme.1
知らないものを知る衝動

見知らぬ土地への憧憬はいつの時代も人を突き動かす原動力になります。
極上の旅行記は旅の仕方を教えてくれるだけでなく、世界の見方まで変えてしまう人生のガイドブックにもなり得ます。
飛行機や列車の小窓から覗く人それぞれの表情、原始の地球を思わせる山々…。
旅路と旅先でしか出会えない人と風景に心を踊らされます。
二子玉川発・世界行きの旅の始まりです。

  • 私にはもうひとつだけパタゴニアで
    やらなければならない事があった。
    それは失くした毛皮の代わりに
    なるものを見つけることだった。

    (P326)

    『パタゴニア』
    ブルース・チャトウィン(著)、
    芹沢真理子(訳)

    河出書房新社(河出文庫)/2017年

    紀行文学の旗手ブルース・チャトウィンが描く実体験を元にした壮大な物語。作家になる前に新聞記者として働いていた頃、南アメリカのさらに南、パタゴニアという地方の存在を知る。その地を旅した後に書かれた人間存在の本質を問う紀行文学の傑作。

  • 太陽が巨大な丸い火の玉となって
    燃えさかっていた。
    「うわぁ、太陽だ。すげえ……

    (P38)

    『極夜の探検』
    (月刊たくさんの不思議2020年2月号)
    角幡唯介(文)、山村浩二(絵)

    福音館書店/2019年

    地球上のすべての生き物の命を司る光、古代人が見ていた本物の太陽が見たい。との思いから、1日中太陽が昇らない極夜へ命がけの旅に出る探検家の角幡唯介。絶望の深淵に立ったとき、眼前に現れた黄金色の輝きとは。

  • もちろん一人旅や二人旅の
    よさはあって、変わらず楽しみに
    続けている。けれどもそれと
    同じように、家族や大勢で分かつ
    旅の味わいがあると、
    歳を重ねて気が付けた。

    (P3)

    『一泊二日 観光ホテル旅案内』
    甲斐みのり

    京阪神Lマガジン/2016年

    昭和レトロな雰囲気の漂う建物や、宴会場や娯楽施設を備えた個性溢れる施設、豪華な食事……。リゾートホテルやビジネスホテルとは一味も二味も違う、どこか懐かしくて新しい「大型観光ホテル」に泊まる旅の魅力を紹介する一冊。

  • 「何でも見てやろう」という主義に
    したがって、ちょっと名の知れた
    ところなら、どんな田舎町でも
    すべて寄ってやろうという計画を
    たて、それをこくめいに実行した。

    (P59)

    『何でも見てやろう』
    小田実

    講談社(講談社文庫)/1979年

    高校生にして長編小説を書き上げ、早くから才能を発揮していた小田実。大学在学中にアメリカ全土を旅し、「何でも見てやろう」という初期衝動のままに世界放浪の旅を続けた。本書は1961年に出版されるやベストセラーとなり、多くのバックパッカーを生み出した。

  • 食は止む事を得ずして、
    かぎりなく続く。

    (P67)

    『もの食う人びと』
    辺見庸

    KADOKAWA(角川文庫)/1997年

    世界中の「もの食う」営みを巡ったルポルタージュであり著者の旅の記録。人はいつ・どこで・だれと・どう食べているのか。地図からは見えてこない世界の有り様を食を通して照射する衝撃の内容です。

  • 「偉大なる午後」(グラン・タルデ)を
    過ごすために、いつの日か再び、
    僕はスペインを訪れるであろう。

    (P180)

    『奈良原一高のスペイン―約束の旅』
    奈良原一高

    クレヴィス/2019年

    戦後日本の新しい写真表現を開拓した奈良原一高が、1962年から65年までヨーロッパ各地を巡った旅の写真集です。代表作となった数々の作品を生み出すことになったスペインを始め、奈良原は自身の写真表現の新境地をヨーロッパに見出したのでした。

  • 僕には今でもときどき遠い
    太鼓の音が聞こえる。
    静かな午後に耳を澄ませると、
    その響きを耳の奥に
    感じることがある。

    (P563)

    『遠い太鼓』
    村上春樹

    講談社(講談社文庫)/1993年

    「遠い太鼓に誘われて 私は長い旅に出た(中略)」トルコの古い唄から始まるこのエッセイは、村上春樹が1986年から1989年まで、海外に住みながらヨーロッパの各地を旅した旅行記です。本人不在の日本で大ベストセラー作家となった葛藤や、海外で暮らすことなどが綴られています。

  • どこからか聴こえてくる
    太鼓のしらべに誘われて旅に出る

    『DISTANT DRUMS』
    濱田英明

    2019年

    ※この書籍のカバーデザインは2種類ございます。

    35歳でデザイナーから写真家に転身した濱田英明の自費出版写真集。村上春樹の『遠い太鼓』にインスピレーションを受けた本写真集でテーマとした風景や被写体に対しての絶妙な距離感は、親密で温かく、その場所にいるような気分にさせられます。

  • 〈形式にこだわるな。
    感じたままに吹いてみろ!
    それがジャズだ!〉

    (P98)

    『青年は荒野をめざす』
    五木寛之

    文藝春秋(文春文庫)/2008年

    新宿のジャズ喫茶でトランペット奏者として働く主人公・ジュンは、一緒に働く仲間たちに才能を認められつつも、「お前のジャズには何かが足りない」と言われ、その「何か」を探すべく、1人世界放浪の旅に出る。まだ海外旅行が一般的ではなかった時代の青春のバイブル。

  • 「画家が絵の具とカンバスを
    必要とするように、行動すること
    それ自体を必要とするタイプの
    人間がいる」

    (P148)

    『どうして僕はこんなところに』
    ブルース・チャトウィン(著)、
    池央耿・神保睦(訳)

    KADOKAWA(角川文庫)/1999年 絶版

    オークションハウスで美術鑑定士として働いていた経歴を持つ異色の作家ブルース・チャトウィン。本書は旅や美術を軸として、彼の多岐にわたる感心事が散りばめられた散文集です。鋭い眼差しで世界を見続けた彼の言葉には旅への憧憬が詰まっています。

Theme.2
空想の旅

旅とは即ち何処かへ移動することですが、移動するだけが旅ではありません。
パスポートに溜まっていく出入国スタンプや空港の待合室から眺める飛行機を見ればかつての旅を思い出したり、
今すぐ旅に出たくなる衝動に駆られませんか?
すぐに行けない場合は本を手にとって、移動しない旅=空想の旅をしてみてはいかがでしょうか。

  • よほど島好きでないと
    ここまでは旅しないか—

    (P253)

    『原色 日本島図鑑』
    加藤庸二

    新星出版社/2013年

    日本にいくつ島があるかご存知でしょうか?本書は誰もが知る有名な有人島から初めて聞くような無人島まで443の島々を紹介しています。その島に伝わる文化・風土・環境など詳細に記しており日本の来歴まで知れる内容になっています。

  • 私は、見聞をひろめる
    ためではなく、 迷うために
    旅に出たのでした。

    (P48)

    『旅の絵本』
    安野光雅

    福音館書店/1977年

    世界の街並みを描いた安野光雅『旅の絵本』シリーズ第1巻は中部ヨーロッパが舞台。繊細な筆致と温かな色合いで描かれた外国の風景の中、皆が楽しそうに暮らしています。飛行機が着陸のため雲の下に降りたとき、初めて見る街にワクワクするような感覚でページをめくってください。

  • あかい みち ころ ころ ころ

    (P6)

    『ころ ころ ころ』
    元永定正

    福音館書店/1974年

    タイトル通りころころ転がる色々な色。みんなで仲良く一列になってどんどん転がっていきます。どんな険しい道を行こうとも、帰る場所があることをこの絵本は教えてくれます。直感的な色とかたち、ころころと躍動感のある表現、赤ちゃんに初めて読んであげる絵本としておすすめ。

  • そのとき、とおい とおい
    せかいの むこうから、
    おいしい においが
    ながれてきた。

    (P32)

    『かいじゅうたちのいるところ』
    モーリス・センダック(著)、
    じんぐうてるお(訳)

    冨山房/1975年

    いたずら好きな男の子マックスは、お母さんに怒られて寝室に放り込まれてしまいます。ここから空想の旅が始まります。空想の世界でかいじゅうたちと楽しく遊んで過ごしますが、何か足りない。旅の終わりに感じる寂しさは、帰る場所があるからこそ込み上げる想いなのかもしれません。

  • 「建物、テクノロジー、
    それに芸術を融合させ、
    利用者に『特別』感を与える
    建築の実現を目指す」

    (P206)

    『まぼろしの奇想建築
    天才が夢みた不可能な挑戦』
    フィリップ・ウィルキンソン(著)、
    関谷冬華(訳)

    日経ナショナルジオグラフィック社/2018年

    異形の建築、SFのような未来都市、カプセルに暮らす人々。名だたる建築家たちも映画や漫画のような設定を夢想し、創造上の空想旅行を楽しんでいました。本書で紹介されている建築はどれも実現しなかった未完の建築。これが実現していたら歴史が変わっていたかも?と空想が広がります。

  • どこへ行っても
    人間を見るのが好き。

    (P12)

    『高峰秀子 旅の流儀』
    斎藤明美

    新潮社(とんぼの本)/2013年

    旅をこよなく愛した女優の高峰秀子が生前訪れた場所を、夫で映画監督の松山善三と養女の斎藤明美が辿る追憶のエッセイ。トップ女優らしからぬ、行くのは市井のマーケットや古びた路地裏など、その土地の風情が滲み出た場所ばかり。彼女が愛したのは観光ではなく、そこに住む人々なのです。

  • 皆それぞれに、わが道を行く。

    (P112)

    『空想旅行
    ブルーノ・ムナーリのデザイン教本』
    ブルーノ・ムナーリ(著)、
    阿部雅世(訳)

    トランスビュー/2018年

    イタリアのデザイナーであり教育者でもあったブルーノ・ムナーリは生涯で多くのデザインと同等に独創的な絵本を手掛けました。本書はムナーリの創造教育を体現するような、紙にちらばった21個の点から始まる無限の物語です。

  • “The Passport is ingenious,
    surrealist, ridiculous,
    nonsensical,
    three-dimensional and
    wildly enjoyable.”

    『The PASSPORT』
    Saul Steinberg

    1979年(オリジナルは1949年)

    雑誌『THE NEW YORKER』などで活躍したイラストレーター、ソウル・スタインバーグのドローイング作品集。前半はPASSPORTのスタンプなどをデフォルメした、コラージュ、ドローイング作品、後半は雑誌に掲載されていたイラストとビクトリア時代の建築物を描いたコラージュ作品を収録。

  • 「遠い遠い所へ……
    長い長い旅へ……

    (P72)

    『果しなき流れの果に』
    小松左京

    角川春樹事務所(ハルキ文庫)/新装版2018年

    日本を代表するSF作家・小松左京による長編小説。なぜか白亜紀の地層から出土された「永遠に砂の落ち続ける砂時計」をキーアイテムとして、大阪の田舎から宇宙の果てまで、また白亜紀から一千万年先を超える遠未来まで時空を超えて壮大なスケールで展開する、SF小説の金字塔です。

  • それは素晴らしい時間だった。
    だが、同時に、外部を
    遮断するために地球の裏側まで
    行ったことには、違和感を
    覚えずにはいられなかった。

    (P64)

    『静寂とは』
    アーリング・カッゲ(著)、田村義進(訳)

    辰巳出版/2019年

    日常は様々なノイズに溢れていて、常にノイズに晒されている私たちの体や心は、知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでいるのかもしれません。この本は、ノルウェーの冒険家 アーリング・カッゲによる「静寂」と向かい合い、心身を開放するための一冊です。

  • 古いトランクに
    重ね貼りされたラベルは、
    移動手段や滞在先にまつわる
    旅の想い出の宝庫だった。

    (P35)

    『世界を巡る旅−ガストン−
    ルイ・ヴィトン所蔵
    ホテルラベル・コレクション』
    フランシスカ・マッテオリ

    ルイ・ヴィトンクライアントサービス/2012年

    ルイ・ヴィトンの孫であり、旅を愛したガストン−ルイ・ヴィトンが生涯を通じて収集したユニークなホテルラベルのコレクションから、1,000点以上ものラベルをまとめた一冊。ラベル以外にも、写真資料や著名な旅行作家による解説等も収録しています。ヴィトンのトランクを思わせる装丁も魅力的です。

Theme.3
新たな視座を獲得する

普段見ている視点と全く違う視点から世界を見渡すことができるなら、
なんて事を一度は考えたことがあると思います。
何気ない景色であっても旅先で見ると格別な風景に映るように、独自の視点で物事を捉えている人たちがいます。
本と旅が新たな視点をもたらしてくれるでしょう。

  • その扉と道の向かう先には
    未知の世界が待っている

    『Michi』
    junaida

    福音館書店/2018

    道と未知が交錯するふしぎだけれど楽しそうな街々が繰り広げる物語。男の子と女の子(と一匹)は、目の前に白く延々と延びる道を進みます。言葉なき物語と繊細で圧倒的な画力が唯一無二の世界観を作り出し、大人も楽しめる絵本に仕上がっています。

  • 自然が美しいだけでなく
    日本列島はまさに動いている。
    昨日まで空地だったところに
    あっというまにビルが建ち、
    二日後には歩道橋がかけられ、
    歴史の街は変ろうとし、
    工業都市は日本のエネルギーを
    空にふき上げている。

    (P110)

    『新装版 真鍋博の鳥の眼
    タイムトリップ日本60'S』
    真鍋博

    毎日新聞出版/2019

    SFや未来都市を多く描いたイラストレーターの真鍋博。本書で描かれたのは高度経済成長を爆進する1960年代の日本。日本全国を鳥瞰図で捉えた本書は、航空写真を撮り、地上では撮られた写真を元に建物の名称などを隅々まで調べ上げ、それらを精緻に描き込んだ驚異の一冊。

  • 私たちの想像力をかきたてて、
    複雑で入りくんだ姿を
    思いうかべてみても、本当の地下に
    隠れているものほど
    びっくりさせられるものは、
    まずないのではないでしょうか。

    (P109)

    『アンダーグラウンド–
    都市の地下はどうつくられているか–』
    デビッド・マコーレイ(作)田村明(訳)

    岩波書店/1981年

    都市の地下には電気・ガス・上下水道・地下鉄などの生活インフラが張り巡らされ、さながらもう一つの都市が形成されています。アナログな方法で地下を観察した著者による地下の大解剖図鑑。今この場所も広大な地下都市の上に成り立っているのです。

  • ……
    うらやましい……
    もし……
    人にも羽が生えていたなら……
    いったい江戸は
    どんなふうに見えるのか

    (P18)

    『ふらり。』
    谷口ジロー

    講談社/2011年

    物語の主人公は江戸時代に日本全国を測量し、『大日本沿海輿地全図』を完成させた伊能忠敬と思しき人物。隠居生活をしながら江戸を測量(散歩)して歩き、時々で起こる出来事をつぶさに観察しながら江戸の街を愛でています。

  • 空腹で決断すると
    ロクなことがない

    (P51)

    『今日の人生』
    益田ミリ

    ミシマ社/2017年

    何事もないような1日でも実はかけがえのない1日だったり、悲しく辛い日でも美味しいものを食べれば最良の1日になったり、1日1日の積み重ねで人生は形づくられていきます。日常の隙間に潜む共感覚を掘り出すのが上手な益田ミリさんによるコミックエッセイ。

  • 一人ゆっくりころがっていく

    (P92)

    『新装 ぼくを探しに』
    シェル・シルヴァスタイン(著)、
    倉橋由美子(訳)

    講談社/1979年

    絵本『おおきな木』で知られるシェル・シルヴァスタインによるシンプルな線のみで描かれたふしぎな絵本。「ぼく」は足りないかけらを探しに旅に出る。その先で「ぼく」が見つけるものとは?この本の結末には人それぞれ違った解釈と受け取り方があるはずです。

  • 絵画もまた、「今ここ」にいる
    わたしたちに、四角い枠に囲われた
    「ここではない世界」の眺めを
    もたらしてくれるもの。

    (P10)

    『窓展 窓をめぐるアートと建築の旅』
    東京国立近代美術館(編)

    平凡社/2019年

    イタリア・ルネサンスの人文主義者、レオン・バッティスタ・アルベルティが著書『絵画論』の中で絵画と窓の関連性を説いて以来、数多の画家たちが窓をめぐる絵を描いてきました。窓が外と内を繋ぐ境界線であるように、アートと建築の境界線も窓なのかもしれません。

  • 「探すのをやめないこと。
    旅をやめないこと。なぜなら
    広い世界が待っているからだ。
    世界が小さくなることはない」

    (P163)

    『旅の効用 人はなぜ移動するのか』
    ペール・アンデション(著)、
    畔上司(訳)

    草思社/2020年

    スウェーデン人ジャーナリストのペール・アンデションがインドを中心に世界中を旅した旅行記。「人はなぜ旅をするのか?」という人類の根源を問う重厚な一冊です。ジャーナリストだからこそ書けるルポルタージュのような滋味深い書き味が旅への衝動を駆り立てます。

ART

日常と非日常が共存する
ここにしかない空間

永山 「二子玉川には、都心からほど近い『リゾート地』として開発された歴史があり、この空間もナチュラルに外に開かれた『避暑地のラウンジ』というコンセプトで設計しました。リゾートは『日常』と『非日常』が共存していることが魅力なので、この空間でも、日常生活の延長線上で、非日常的な気づきや感動が生まれるようにと、本やARTとの新たな出会いを設計・演出しています。また、室内でありながら避暑地の『屋外』を体感できるように、自然光に見える照明装置をつくり、昼は自然の中にあるデッキ、夜は光を抑えたリビング、というように時間によって多様な表情を見せる空間になっています」
高須 「外の『自然』を内部の空間に取り込むという意味で、自然現象を利用し作品をつくるアーティストの松下徹さん、本や文章との新しい関係を築くという意味で、文字を抽象的に使用するBIENさんの作品を展示し、同時に視覚的な効果もある柱の壁画も描いてもらっています。『非日常』的な要素のARTを『日常』という切り口で見られるように、空間の中での作品の見え方を考えました」

Artchitecture

永山祐子YUKO NAGAYAMA

建築家。1975年東京生まれ。2002年永山祐子建築設計設立。主な仕事に「LOUIS VUITTON 京都大丸店」、「豊島横尾館(美術館)」など。主な受賞に、JIA新人賞(2014)「豊島横尾館」、山梨県建築文化賞、東京建築賞優秀賞(2018)「女神の森セントラルガーデン」など。現在、ドバイ国際博覧会日本館(2020)、新宿歌舞伎町の高層ビル(2022)などの計画が進行中。
http://www.yukonagayama.co.jp/

Art Curation

高須咲恵SAKIE TAKASU

アーティスト、キュレーター。2011年東京藝術大学大学院美術教育研究室修了。街の中でおこなわれる表現「ストリートカルチャー」に関するリサーチや、展覧会の開催、作品制作をおこなう。主な展覧会に、2017年石巻市「Reborn-Art Festival」アシスタントキュレーターとして参加、2018年市原湖畔美術館「そとのあそび展」共同キュレーションなど。

Artist

展示と柱の装飾を手がけた2名のアーティスト
柱を飾るウォールペインティングのほか、期間限定で作品を展示いたします。

松下徹

「Joban Time Zone(House in Inodai)」1180×1110mm
Household paint on plywood 2018 Photo:Kioku

独自に配合した化学塗料の変化を用いて塗装面のひび割れを起こすペインティングや、高電圧の電流などの工業生産の技術を利用したドローイングなどの絵画作品を制作。システムが自動的に生成する図柄を観測・操作・編集するプロセスを利用することで、作家の作意を超えた現象の結果としての「絵画」を生み出す。

Profile

1984年神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了。アートチームSIDE COREのディレクターのひとり。

BIEN

「Count the Waves -Visualizing Invisibility-」東京藝術大学陳列館 2019
「Day For Night」3600×3600mm Cutting sheet on wood 2019
Courtesy of Department of Arts Studies and Curatorial Practices, Graduate School of Global Arts,
Tokyo University of the Arts. Photo by Masataka Tanaka.

1990年代後半のストリートカルチャーやアニメ、フィギュア等の表現に影響を受け、キャラクターを描くことから制作を始める。それらのキャラクターや文字の型を分解してできた「線」により、抽象と具象の間を揺れ動き、曖昧さと有機性を併せ持った、平面・ドローイング・壁画・インスタレーションなど多岐にわたる制作を展開。

Profile

1993年東京都生まれ。多摩美術大学美術学部卒業。主なグループ展に「理由なき反抗」展(ワタリウム美術館、渋谷)など。

ウォールアートの
制作風景はこちらから!

サステナブルな空間を彩る
命の連鎖を描くART

大小島 真木

大小島真木 Maki Ohkojima "海、生命のスープ"
sheet size: 335×440mm, desital print, 2019 accompany with island JAPAN

描くことを通じて、鳥や森、菌、鉱物、猿など他者の視野を自身に内在化し、物語ることを追求している。作品とは、思考を少しずらしたり、視野を少し変えてみせたりすることの出来る“装置”のようなものであると考え、日々制作中。インド、ポーランド、中国、メキシコ、フランスなどで滞在制作。2014年にVOCA奨励賞を受賞する。科学探査船タラ号太平洋プロジェクトに参加。今回グランパティオのリニューアルではベンチ周りの柱3箇所に作品を展示しています。

Profile

1987年東京都東久留米生まれ。2011年女子美術大学大学院修士課程修了。主な個展に、「鯨の目」(2019年、フランス・パリ水族館)、「骨、身体の中の固形の海。-植物が石化する。」(2019年、HARUKAITO、東京)主なグループ展に、「瀬戸内国際芸術祭‒粟島」(2019年)など。